恋する銀行員

元メガバンクの社畜が紡ぐ物語

【恋する銀行員】第4話『入社式』

第4話

『入社式』

 

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初めての人は第1話からどうぞ

 

higumaaa.hatenablog.com

 

 

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前話あらすじ

 

ソルジャー戦士ヒグマはM銀行の陰謀により髪型が金総書記となった。

そして、入社式初日。

 

僕は銀行員になる

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4月1日早朝

 

僕は研修所のベットで目が覚めた。

 

 

前日は研修所初日。

 

身も心も頭髪もボロボロにレイプされた僕は、

まだ心の傷は癒えてなかった。

 

 

起床は5時。

数日前まで学生として、

クズの様な生活をしていた僕には考えられない早起きだった。

 

今日はこれから入社式。

朝7時に研修所を出発し、バスで大手町の本店に向かうらしい。

 

 

朝の準備も早々に終わり、バスで移動。

10時からの入社式に対して9時前には大手町についていた。

 

大手町の本店に入ると、大ホールに閉じ込められた。

 

 

 

講師

「静かにしろおおおおお!」

 

 

昨日ぶりの講師の叫びに、ビクッとした。

 

 

どうやら1日で恐怖的イメージが植え付けられ、

頭より先には身体が反応してしまう仕様になってしまったようだ。

 

「く、くやしい」ビクンッビクンッ

 

 

頭もおかしくなってしまったようだ。

 

 

 

講師

「前を見ろおおおお!」

 

 

目の前には映画館のような巨大なスクリーン

 

そのスクリーンには僕たちと同じ、

社畜臭のするソルジャー達が映し出されていた。

 

 

 

講師

「これは関東と関西を中継しているうううう!お前らの同期だあああああ!」

 

 

 

どうやら、総合職は関東で入社式と研修。

 

場所の都合で、特定総合職は関西で入社式と研修をしているらしい。

※特定総合職とは転勤の無いソルジャーの事。

 

 

講師

「これから長あああい付き合いになっていく同期だあああ!お互い手を振れえええええ!」

 

 

講師の大号令と共に関東と関西の死んだ顔をしたソルジャー達が、

マリオネットのようにスクリーンに向かって手を振り出した。

 

 

とうの昔に飼いならされた僕も、

無表情でスクリーンに手を振っていた。ビクンッビクンッ

 

 

忘れていたが僕は北朝鮮カットだ。

 

向こうから見たら新社員の中に金総書記が数人混ざっている異様な光景だっただろう。

 

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出典:http://abcd1603.hatenablog.com/entry/2017/04/25/090834

 

 

講師

「今から入社式の練習をするううううう」

 

 

???

 

 

「入社式って練習いるの???」

 

なんて思う思考などは既に無く、言われるがままに練習がスタートした。

 

 

 

講師

「起立ううう!気をつけえええ!!!礼いいいいいいいいいいいいいいいい!」

 

「起立が遅おおおおおおおい!お前だあああああ!」

 

「体を動かすなああああああ!」

 

「頭を上げるのが早あああああい!」

 

 

 

のようなやり取りを10回以上繰り返していた。

 

ただ、

僕たちはマリオネット。

 

みんな無表情で、

 

起立・気を付け・礼

 

を繰り返していた。

 

 

 

講師

「よしいい!いいだろううう!これから頭取がいらっしゃるうううう!練習通りにやれえええええ!」

 

 

 

ついに頭取が来るらしい。

頭取とは一般企業で言う社長だ。

トップ オブ トップだ。

 

銀行はなんかよく分からないが、未だに社長の事を頭取と言っているらしい。

 

頭取の由来が知りたい人は勝手にググってくれ。

対して記憶に残らない回答が書いてるゾ。

 

 

数百人の元ソルジャー、現マリオネット達が微動だにせず待っていると、

 

ついに頭取が現れた。

 

忘れているだろうが、関西組はスクリーンの向こう側だ。

向こうからしたらスクリーンに映し出された

頭取に今から一生懸命頭を下げるのだ。

 

そう。

彼らは自分の会社の社長を、

終ぞ肉眼ですら見ることがないのだ。

 

これが圧倒的人気企業メガバンクである。

 

そこらの一般企業とはレベルが違うのだ。

 

 

 

そして、我々マリオネットは練習通り、

寸分の狂いなく、

 

起立・気を付け・礼

 

をこなし、入社式は円滑に進んでいった。

 

頭取

「本日は入社式です。みなさんは〜」

 

あたりで僕は記憶が飛んだ。

朝が早いと集中が出来ない。

 

 

 

頭の中で

マリオネットの僕と、

入社に後悔し続けるヒューマニズム溢れる僕が、

 

言い争いをしていた。

 

 

 

 

 

結果、北朝鮮カットのマリオネットが僅差で勝利した。

 

 

 

講師

「以上でえええ、入社式を終えるうううううう」

 

現実に戻ってきた。

 

 

 

講師

「今から研修所に戻って、研修を始めるううううう」

 

どうやら本番はこれかららしい。

 

 

 

 

思い描いていたものと少し違うかもしれない。

 

 

少し恐怖政治に制圧された精神

 

少し短くなった髪型

 

数日前の僕からは想像も出来ない自分自身だったが。

 

少し誇らしく、

 

今日から銀行員になった。

 

 

続く

 

 

higumaaa.hatenablog.com

 

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