恋する銀行員

元メガバンクの社畜が紡ぐ物語

【就活】メガバンクと甲子園はほぼ同義語である。

僕は野球が好きだ。

今年の甲子園は記念大会にふさわしい素晴らしい試合ばかりだった。

 

そんな甲子園を見ていると、

毎年過去を振り返ることがある。

 

 

そう。

あれは2015年6月。

場所はM銀行H営業部。

夏の始まりの時期だった。

 

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元高校球児だった私は、

いつものように圧倒的なスピード感で仕事をやってるフリをしながら、

Yahooスポーツの野球中継を『1球速報』に設定し、

圧倒的なスピード感で『更新』をクリックし続けていたら、

信じられない事件が起きた。

 

 

 我らが天皇から大いなる勅令が奉じられた。

 

 部長(天皇)

「今日からここで水飲むの禁止な」

 

 

職場のトップ。

部長が『飲料禁止の大号令』をかけたのだ。

 

 

Yahoo野球中継のジャイアンツ戦で『野球』に脳を切り替えていた私は、

 

「我が部はついに甲子園を目指すのか…」

 

と考えた。

 

全身が震えた。

武者震いだ。

 

 

高校野球時代を思い出した。

監督の指示は思考より先に返事をしていた。

 

すなわち。

返事をしてから思考をする。

 

「オッス!」

 

と言ってから思考するのだ。

 

出来ないことも

 

「オッス!」

 

と言ってから思考し、

そして、

怒られるのだ。

 

 

咄嗟に身体が反応した。

「オッス」

と高校球児を彷彿とさせる返事をした。

 

 

 

6月である。

 

 

 

古くは正岡子規がこよなく愛し、

天皇も足を運び観戦する「野球」という大衆スポーツ。

その野球をするものであれば一度は憧れる聖地、

「甲子園」を目指すのであれば、

練習中、もとい営業中に水を飲まないという判断も、

英断のように聞こえる。

 

 

ちなみにスポーツをやっていた上司の

「俺の時代は~口癖ランキング」1位は

「俺の時代は水なんて飲めなかったからな~」

であるのは古今東西揺るぎないものと確信している。

 

 

 

フッと我に返り、周囲を見渡すと違和感。

 

 

時間にして約0.1秒。

たったの0.1秒。

まさに刹那。

私は気付いてしまったのだ。

 

甲子園を目指すには明らかに足りない

パズルのピース

 

 

 

「おかしい。野球部は俺しかいない…」

 

 

疑問は重なる

 

 

「このメンバーで勝てるのか?」

「本当に甲子園に行けるのか?」

「俺が甲子園に連れて行くのか?」

「一人で?」

「いいだろう。やってやる!やってやるぞおおお!」

 

まさに『逆境ナイン』!

 

 

などと思っていたら疑問に対する答えが響いた。

 

 

 

 

 部長(天皇)

「数字悪いからな。」

 

  

 

 

 

 

おお

 

 

 

 

そうか思い出した。

 

ここはM銀行だ。

 

我々は常に稼ぎ続けるソルジャーだ。

 

自分の使命について再確認することが出来た。 

 

 

 

 

しかし、一つの結論に至る。

 

それは思考のセカンドインパクト。

 

しかし、シンプルなる疑問。

 

 

「デスクワーク中って水飲んじゃ、ダメなの?」

 

 

 

思考はより幼くなる

「え、水飲むなって、マジ?」

「昭和の野球部かよ?」

「ここ銀行だぜ?マジかよ?」

「てかこれから夏本番だぜ?コントかよ?」

「何考えtくぁwせdrftgyふじこlp:wwww」

 

 

 

しかし笑ってはイケナイ。

 

 

 

笑うと関連会社への『出向』が待っている。 

 

部長は本気なのだ。

部長は本気と書いてマジなのだ。

 

 

銀行では

「本気」と書いて「シュッコウ」なのだ。

 

 

 

まだ銀行からでたくないよおおおおお。

 

 

 

思考が一周して二周目。

思わず笑いたくなった私は、

他に笑いそうになっている被害者の会の住人を探した。

 

 

隣のK先輩だ。

K先輩が爆笑していた。

 

 

K先輩は大学では体育会サッカー部主将。

様々な逆境を乗り越えてきた方である。

様々な理不尽を乗り越えてきた方である。

 

 

 

そんな体育会出身のツワモノすら、現状を理解するに至らない。

 

すなわち「逆境」の向こう側に、我々の営業部は旅立っていったのだ。 

 

 

 

ゾクッ

ゾクゾクッ 

 

 

感じる殺気。

 

 

 

 

鬼が鎮座していた。

 

 

 

部長の隣の副部長(鬼)が阿修羅のような顔でK先輩を睨んでいる。

 

「笑うな…」

 

顔に書いてある。

 

 

 

銀行における副部長の仕事は主に二つある。

 

一つは、自分の上司。

自分の人事権を掌握した部長のお言葉に。

「はい。」

と強く答える事だ。

二つ目は、自分の上司。

自分のありとあらゆる人事権を掌握し、自分の出向の全てを握りしめる部長のお言葉に。

「Yes!」

と強く答える事だ。

 

すなわち、

部長の

 

「水を飲むな!」

 

という時代を先取りした提案に対し。

 

副部長は、

「はい!」

or

「Yes!」

なのだ。

 

 

きっとメガバンクに勤めていない平民からすると、

 

K先輩が正しいリアクションなのだろう。

私も笑いたい。

 

 

しかし笑うことも許されない。

そんな現場。

そして明日からは水を飲むことすら許されない。

それがメガバンクなのだ。

 

 

20時。

部長が少し早めに帰宅後。

 

部長の影が消えると。

副部長から再確認。

「明日からお前ら店の中で水飲むなよ。」

 

そして

「K!お前なんだその顔は?ふざけるなよおおおおお。」

 

K先輩は別室に呼ばれて、教育をされた。

 

 

きっと体育会という厳しい環境に身を置いた、

偉大な先輩でも初の体験だろう。

初の理不尽だろう。

 

 

「銀行で水を飲むな」

 

 

我々はK先輩の屍を乗り越え。

 

この事件は後世まで語り継がねばならない。

 

当時の僕はそう決意したのだった。

 

 

 

 

 

さあ、明日からも野球が楽しみだ。

頑張れジャイアンツ!
頑張れM銀行!

 

 

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